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おとなカレッジ

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子供にとって良い絵本とは(その1)

じしょ

「子供にとって良い絵本とは」(その1)

名古屋市にある日本で最初の絵本専門店「メルヘンハウス」の代表の方による、絵本についてのお話を聞きに行った。近くの児童館の催しなので、あまり期待していなかったのだが、非常に勉強になったし感動してしまった。

eddieeは悩んでいたのだ。12月号の「スクスク子育て」の「テレビって悪なの?絵本て善なの?」のページで、子供の興味を無視して大人が選んだ良書ばかりを押し付けられては息苦しくなってしまう。という記事を読み、自分が選んでいる絵本は、姫にとってふさわしいのかどうかわからなくなってしまったのだ。そんな事もあって、絵本の専門家に話を聞く機会ができたのは、とてもタイミングが良かった。まずは、お話の抜粋から・・・・
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絵本て、どれくらいから月齢から楽しめると思いますか?実は、生後8日目の赤ちゃんが、絵本を読むのを聞いて「ケラケラ」笑ったとう例があります。実際にその時の写真をいつも持ち歩いているので事実です。絵本を楽しむというのは、生まれる前から、妊娠中からでも読んで聞かせて親子で楽しめるものなのです。

私のお店でめったに売れない本があります。「ぞうのボタン」という絵本ですが、一文字も書かれていません。絵だけなので大人はまず買わないんです。我々大人は、ついHowto本のような「ためになる絵本」を選びがちです。でも、子供達は全然違う見方をするんですよ。

とても有名な「いないいないばあ」という絵本があります。私のお店によく遊びに来る女の子が、この絵本を50回も60回も店のスタッフに読んでもらおうとするんです。たまたま僕が捕まって(笑)読んでいた時、表紙の次のページに載っているねずみを見て「あ、ねずみさんがいる」って言うんですよ。見ればわかりますよね(笑)、絵本を読み進むうちに、ねずみが出てくる場面があるんですが、そこで「このネズミさんさっきのネズミさんだよ」って言うんですよ。驚いて「このネズミさんは、絵本の中に入ってきて、ここで登場するってことなの?」て聞いたら「あたりまえじゃない」って答えたんですよ。さらに絵本を読み終えて「絵本終わったよ」って言うと、「絵本終わったね、だからネズミさん絵本から出てきて後ろに載ってるんだね」って言うんです。私はビックリして、「今まで何十回も読んでいるけどそんな風に考えたこともなかったっよ」って思いました。子供の想像力って本当に大人の考えの及ばないところにあるんですよ。

考えてみれば、猫やネズミが「いないいないばあ」をするって現実にはありえないことですよね?絵本や本の世界は、そういった非現実の世界を描くことで、子供達を非日常の世界、空想の世界に連れて行く窓口なんです。大人が小説を読んだり、映画をみる事も、同じことなんですが、子供達の空想の世界は大人の非じゃなくらい広大なんです。お子さんに毎日同じ絵本を読んでってせがまれることありませんか?大人は「毎日同じ絵本でよく飽きないなぁ」ってうんざりすると思うんですが、子供達はその空想の世界が広いから、何度でも違った楽しみ方ができるんですよ。

もう一つ有名な絵本で「はらぺこあおむし」というのがあるんですが、私は作者のエリック・カールと知り合いで、彼は何度か私の店に遊びに来たことがあるんですが、表紙の次のページにカラフルなドット模様があります。本人に「これは何を意図して書いたの?」と聞いたら「単にデザインの処理でやっただけだよ」と答えたので、「私のお店にくる子供が、これはあおむしがたくさん食べて出したウンチだよって教えてくれたよ」って言ったら「すばらしい、その子は天才だ!」ってえらく感動してくれました。大人はこの絵本を「デザインが綺麗だ」とか「曜日や数字が覚えられてためになる」といった見方をしますが、子供達はまったく違う捕らえ方をしているんですよね。

私はアメリカの大学で2年間絵本について勉強をしたんですが、どうしてもわからない絵本がありました。「三びきのやぎのがらがらどん」という北欧の昔話なんですが、世界中で翻訳されていてロングセラー絵本なんです。私はこの本の何がそんなに子供達を惹きつけるのか、どうしてもわからなかったんです。でも、店に来る子供達に聞くと、最後のページの「みんなで草を食べて大きくなった」っていうのが面白いって言うんですよ。大人が読んでもちっともわからないでしょう?考えてみれば、絵本では食べ物を食べる場面やお話が実に多いんです。「ぐりとぐら」だって「しろくまちゃんのほっとけーき」だってやたらと食べるシーンが多いんです。そこでわかったことは、子供は潜在的に大きくなりたいんですよ。大人はこれ以上大きくなりたいなんて思いませんよね(笑)でも、子供達はたくさん食べて大きく成長したいと潜在的に思っているんです。そこで、絵本の登場人物たちがたくさん食べて大きくなるという事に楽しさや喜びを感じるんですね。お店にくる子供達に、「やあ、大きくなったね」って挨拶するととても嬉しそうにしますよ。この仕事を始めて30年近くなりますが、アメリカでの2年間よりも、子供達に教えてもらったことの方が実に勉強になりました。(つづく)


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